運命とは必然なもの

番外編

〜その後の幸せ〜


その日、僕はとても胸騒ぎがしていた―










「今日2人とも夕方家にいて欲しいんだ。」
姉さんがマフィア討伐の為に召集されてから3年がたった。今では兄さんは家で機械鎧を作って売っている、売ってるって言っても兄さ
んはあまり身体が強くないから店は出さずに広告だけだして注文を聞いてそれを作るっていうかんじ。知る人ぞ知る名店になってるっ
ていう噂をよく聞く。姉さんは兄さんの手伝いをしている。注文のあったお客さんのところに行ってどんな状態なのかとかどんな機械鎧
がいるのかとかサイズとかを聞きにいくのが姉さんの仕事だ。僕はまだ学生で今4年生だ。
あの時姉さんは3日で帰ってきた。しかもとても幸せそうな顔をして。戦いをしてきた人間の顔じゃなかった。
最初僕と兄さんはとても不思議な顔をしたけどその時は姉さんが無事に帰って来てくれたことがすっごく嬉しくてラッセルやフレッチャ
ーも呼んで姉さんのお帰りなさいパーティをしたんだ。
でもそれ以来姉さんの嬉しそうな顔が頭から離れなかった。
そして、今日・・・。朝食の席で姉さんが僕と兄さんに家にいて欲しいと言った。
「ん?どうしたの?」
「ちょっとね・・・。」
物事をはっきり言う姉さんが兄さんの質問に曖昧な返事をした。僕らに今言えないことなんだろうか。
「アル?何か予定あるのか?兄さんはいいって言ってくれたんだけど。」
姉さんが考え込んでいる僕に不安そうに聞いてきた。僕が考え込んでいる間に兄さんはOKを出したらしい。姉さんに聞きたいことはた
くさんあったけど今日の放課後にわかるのだろうと結論付けて、今日は特に何もなかったから僕もOKをだした。
「何もないよ。」
「そっか、じゃあ6時には家にいてくれな。」
姉さんが時間を指定して僕らが頷いたのを切欠に朝食は終了した。皆もう家を出ないといけない時間だった。











































放課後、僕は授業の後教授に捕まってしまい教授の手伝いをさせられていた為、家に着いたのは6時30分だった。姉さんの言っていた
時間より30分も遅れてしまっていたので急いで帰った。
「ただいま!!」
自分の鍵で家のドアを開けて挨拶をして靴を脱ごうと下を向いた時、見たことない男の人の大きな黒い靴が置いてあった。
「おかえり、アル。遅かったね。」
「ただいま兄さん。ごめんね教授に捕まってたんだ。」
「それはご苦労様。お客さんが来てるんだ、挨拶してね。」
「お客さん?」
兄さんはご苦労様と苦笑して言ったが、僕はその後の言葉にドキドキした。お客さんとはあの黒い大きな靴の持ち主だろうか、姉さんの
言っていたのはこのことだったのか。
廊下を進んでリビングに入るとそこには黒髪で黒い瞳のどこかでみたことがあるような大人の男の人と姉さんが並んで座っていた。
「あ、おかえり!遅いぞ、6時って言っただろ。」
「おかえり、アル君。お邪魔しているよ。」
僕の胸騒ぎは的中した。


























「どういうことか説明してくれない?姉さん。僕にわかりやすく。」
部屋に鞄を置いて姉さんと黒髪の男の人の前に座って説明を求めた。
「んー、こいつが今日俺がアルと兄さんに家にいて欲しいって言った理由。」
「そんなのわかってるよ。この人は誰か、なんでここにいるのかを聞いてるの!」
僕がちょっと怒った風に言うと男の人が姉さんの代わりに話出した。
「すまない、自己紹介が遅れたな。私はロイ・マスタング。この国の大総統をしている。」
「大総統?!?!」
さっき自分が思った“みたことがあるような”と思ったのは新聞やテレビでだった。2年前、前大総統が急に引退を宣言してその息子が大
総統の座につくことが発表された。その現大総統が今目の前にいる人だなんて・・・。
「大総統がなんで姉さんと知り合いなんですか?」
「3年前、彼女が襲われているとこを助けてね。それで知り合ったのだが、実は私は昔マフィアのボスでね。3年前に国家錬金術師が召
集されて討伐される予定だったマフィアというのが私のとこだったのだよ。マフィアになったのは軍のやりかたが気に食わなかったのと
父への反発だ。だが、今は自分が軍のトップになって軍のありかたを変え、この国を平和にすることが目標なんだ。エドは会った当初
から気にはなっていたが、マフィアのボスという立場がそれを邪魔した。でも、彼女が国家錬金術師として我等を討伐しに来て私と戦っ
た時にそれはすでに愛に変わっていることに気付いたんだよ。そして彼女と話し合って戦いを止め、私は父親と和解して次期大総統に
なることを約束した。その時、私は彼女に結婚を申し込んだが断られてね。お兄さんを助けないといけないから、君に何の心配もかけ
ずに勉強さしてやりたから、と。」
「ロイ!!そんなことまで言うなよ!!」
「いいじゃないか、もう時効だよ。」
「うっせぇ!!兄貴とアルの前で言うことないだろ!!」
「はいはい。エディ、落ち着いて。ロイさん続きをどうぞ。」
姉さんがロイさんの言葉に反応して暴れだしたから兄さんが姉さんを落ち着かせてロイさんに続きを促した。
「ああ。お兄さんもエドも卒業したし、アル君ももうすぐ卒業だからそろそろいいかと思って昨日エドにプロポーズしたんだ。そしたらOK
をもらえてね、それで今日君達に挨拶に来たんだ。」
そしてロイさんは僕達に向かって頭を下げた。
「エドワードは私が絶対に幸せにします。だから妹さん、お姉さんを私にください。」
「俺、ロイと一緒にいたいんだ。ロイと一緒に幸せになりたい。」
僕は2人に頭を下げられて慌てたが、兄さんは落ち着いていて2人に頭を上げさせた。
「2人とも頭を上げて。僕は反対しないよ。もっと早く言ってくれてもよかったぐらいなのに。僕はエディに幸せになってもらいたい。」
兄さんの言葉に落ち着きを取り戻した僕は一呼吸置いて姉さんとロイさんに言った。
「僕も姉さんに幸せになってもらいたい。だからロイさん、姉さんをよろしくお願いします。姉さんを泣かせないでくださいね。」
「ああ、絶対泣かせないと誓おう。」
「ありがとう2人とも。」
「でも、ロイさん。姉さん無茶したり無鉄砲だからがんばってくださいね。」
「そうだな、頑張るとしよう。」
「無茶しないでくださいね。」
「なんだよ!!3人とも!!俺は無茶しねぇ!!」
「「「どうだか。」」」
「なんだとー!!!」
ハッピーエンドで終わるはずだったのに僕の一言でロイさんと兄さんが乗っかりそれに姉さんが怒ってみんなで笑った。その後折角だ
からと4人で晩御飯を食べた。姉さんは怒っていたのにとても幸せそうだった。
朝感じた胸騒ぎは姉さんが出て行くのではないかという予感だった。
姉さんがお嫁にいくのは少し寂しいけど、姉さんが幸せならそれでもいいやと思った。
後で聞いた話だけど、父さんと母さんが死んだのは間接的にロイさんのせいだとロイさんが言っていた。でも、僕はロイさんを憎んだり
することはできなかった。だって、あんなにいい人で優しくて姉さんのことを大事に思っていて姉さんが幸せそうだったからそんな気持
ち浮かんでこなかったんだ。



だから心から言えるよ

姉さん、おめでとう。